ゲーム『トゥームレイダー』の主人公・ララ・クロフトが、“最も売れたゲームヒロイン”および“最も雑誌の表紙を飾ったゲームキャラクター”の2部門でギネス世界記録に認定された。
1996年にシリーズ第1作が登場して以来、本シリーズは映画化・ドラマ化・WEBアニメ化といった多彩なメディアミックスを通して世界観を拡張し、約30年近くにわたり多くのファンを魅了し続けてきた。
本記事では、『トゥームレイダー』シリーズが長年にわたり幅広い層の心を掴んできた理由、そしてララ・クロフトというキャラクターが持つ独自の魅力について紐解いていく。
ゲーム『トゥームレイダー』とは

まずは、『トゥームレイダー』とはどのような作品なのか。
『トゥームレイダー』は、1996年にアイドスから発売されたアクションアドベンチャーゲームで、制作を手がけたのはイギリスのゲームスタジオ Core Design である。同社は後に『Hitman』や『レゴ スター・ウォーズ』などを生み出すことになる Eidos Ltd. の傘下スタジオである。
『トゥームレイダー』では、プレイヤーはトレジャーハンターのララ・クロフト(Lara Croft)となり、世界各地の遺跡を舞台にスリリングな冒険へと挑む。三人称視点の3Dアクションゲームとしては黎明期の作品であり、その後のアクションアドベンチャージャンルに大きな影響を与えた先駆的タイトルでもある。
シリーズの進化をたどる:初期4作から“回顧録編”第5作へ

シリーズ第1作から第4作までは、前述の通り、トレジャーハンターであるララ・クロフトが世界各地の遺跡へ潜入し、数々の謎を解き明かしながら秘宝を追い求める冒険が物語の中心を成していた。
第5作では趣向が変わり、これまでのララの軌跡をたどる“回顧録”のような構成が採用されている。ララの友人たちが語る思い出話を通して、過去作の合間に起こっていた彼女の知られざる活躍が描かれる仕立てだ。
シリーズ最大の転換点――第6作が挑んだ“新生トゥームレイダー”とは

そして、大きな転換点となったのが第6作である。本作ではララがある事件の容疑者として追われる立場となり、無実を証明するべく、追っ手をかわしながら事件の真相へ迫っていくというサスペンス色の強い展開が描かれる。
第6作は“新生トゥームレイダー”を目指した作品でもあり、シリーズに多くの新要素が導入された。飛躍的に向上したグラフィック、敵に気付かれないよう行動できるステルスモード、情報収集を軸とする謎解き要素、さらにはララ以外のキャラクターを操作できるパートの導入など、従来とは大きく異なるシステムが多数取り入れられていた。
さらに、特定の仕掛けを解除することで一時的にララの能力が強化され、閉ざされた扉が開いたり、仕掛けを動かせるようになったりと、行動範囲が広がるギミックも用意されていた。
しかしながら、本作はシリーズファンをはじめ、多くのプレイヤーから厳しい評価を受けた。その理由としては、全体的にキャラクターのモーションが遅く、これまでのようなスピード感ある操作感が失われていたことが挙げられる。また、カメラワークが、快適なプレイを阻害していた点や、タイトルに「トゥーム・レイダー」と冠しているのにも関わらず、遺跡がほとんど登場しなかったことも、不満の声につながった。
“原点回帰”のシーズン2

これらの評価を受け、第7作から始まる第2シーズンでは「原点回帰」をテーマにした作品が制作された。例えば、シーズン2の幕開けを飾る第7作では、ララがアーサー王の剣《エクスカリバー》を探す過程で、自身の過去と向き合う姿が描かれる。続く第8作では、シリーズ全体の方向性を再構築するため、第1作『トゥームレイダー』のフルリメイクが行われた。第9作では、北欧神話の神トールのハンマー《ミョルニル》を手に入れるため、《ヤールングレイプル》や《メギンギョルズ》を求めて世界を巡る冒険に挑む。
これらの作品群は、シリーズのファンにおいてはもちろん、それまでトゥームレイダーをプレイしたことがなかったというプレイヤーからも、概ね好意的に受け入れられた。
新たな”ララ・クロフト像”を構築した第3シーズン
続く第3シーズンからは、それまでのストーリーや設定に縛られない完全な再始動が宣言された。それに伴い、ララ・クロフトの容姿はアメリカ出身のモデル、メーガン・ファルカー(Megan Farquhar)を基にしたデザインへと刷新された。これは、後述する映画版『トゥームレイダー』でララ・クロフトを演じたアンジェリーナ・ジョリーのイメージから脱却し、新たな『ララ・クロフト像』を打ち出す狙いによるものであろうことが推測される。
――リブート版『トゥームレイダー』が描いた“冒険者誕生の瞬間”

リブート第1作の『トゥームレイダー』では、21歳のララ・クロフトが邪馬台国の遺跡を舞台に冒険を繰り広げる中で、冒険者として成長していく姿が描かれる。本作のララは、初めはまだ力も経験も乏しく、サバイバル能力に欠ける女性として描かれているが、ゲームを進めるにつれて徐々に逞しさを身につけ、精神的にも強く、タフな冒険者へと成長していく。また、本作はオープンワールドシステムを採用しており、プレイヤーは広大なマップを自由に冒険できる。探索の中で、様々な人物によって記された「ドキュメント」、古代の遺物「レリック」、宝物「ジオキャッシュ」、さらには秘密の遺跡「シークレット・トゥーム」など、多彩なオブジェクトを収集することが可能だ。言い換えれば、本作は、プレイヤーは、ララ・クロフトを通じて、トレジャーハンターとしての冒険を余すところなく体験できると言えるだろう。
事実、本作はその完成度の高さから数々の賞を受賞し、主人公ララ・クロフトの再解釈とシリーズそのものの方向性を大きく転換させた“成功したリブート作品”として高く評価された。
この成功を受けて制作されたリブート第2作が『ライズ オブ トゥームレイダー』である。
“預言者の足跡を追って――ララ・クロフトが挑む『ライズ オブ トゥームレイダー』新たなる真実への旅”

『ライズ オブ トゥームレイダー』では、邪馬台国での冒険を終えたララ・クロフトが、相棒のジョナ・マイアヴァと共に古代遺跡の探索を続ける日々を送る。物語は、父クロフト卿が研究していた「神秘の源」の存在が正しいことを証明するため、父の研究書に記されていた「預言者」を追い、シリアへ向かうララの姿から始まる。
本作では、前作で好評を博したサバイバル要素がさらに拡充されており、探索や戦闘で得た資源をもとに冒険に役立つ道具を作成できるクラフト機能をはじめ、プレイヤーが積極的にゲームを進められるよう、多彩な要素が追加されている。
『シャドウ オブ ザ トゥームレイダー』が描く、”トゥームレイダー”の誕生。

リブート3部作を締め括る『シャドウ オブ ザ トゥームレイダー』では、ララ・クロフトがマヤ文明の古代遺跡を舞台に、終末の予言から世界を救うため奔走する姿が描かれる。数々の冒険を経て世界的な冒険家として名を馳せる一方で、ララは、遺跡に秘められた力を利用して世界支配を目論む謎の組織・トリニティと決定的に対立することになり、常に命を狙われる存在となっていた。
この物語は、単なる冒険活劇にとどまらず、「ララがいかにして真のトゥームレイダーとなるのか」を丁寧に描く、シリーズの集大成とも言える内容になっている。
“ララ・クロフトが不朽のアイコンとなった理由――ギネス記録が示す、進化し続けるゲームヒロインの軌跡”
今回、ララ・クロフトは “最も売れたゲームヒロイン” および “最も雑誌の表紙を飾ったゲームキャラクター” の2部門でギネス世界記録に認定された。これは、彼女が単なるゲームの主人公ではなく、世界的な文化アイコンとして揺るぎない地位を築いている証と言える。

ララが長年にわたり愛され続けている背景には、キャラクターとしての魅力はもちろん、メディアミックスによる幅広い展開がある。まず注目すべきは、彼女が体現する「強さと脆さの両立」だ。知性、身体能力、戦闘技術を備えた屈強な冒険家でありながら、リブート三部作では悩み、傷つき、葛藤する姿も描かれている。この“完璧ではない英雄像”がプレイヤーの共感を呼び、ララをよりリアルで人間味のある存在へと昇華させている。
さらに、ララはゲームという枠を大きく飛び越え、映画・コミック・小説など多方面で活躍してきた。特にアンジェリーナ・ジョリー主演の映画版『トゥームレイダー』は、世界的な認知度を決定づける大きな転機となった。
その後もアリシア・ヴィキャンデルによる新たな映画化が行われ、キャラクターの魅力は世代を超えて継承されている。加えてコミックやアニメーションなどの展開も広がり、ララは“ゲーム発のキャラクター”ながら、ポップカルチャー全体に影響を与える存在となった。
そして、ララ・クロフトは「女性主人公としての先駆者」でもある。1990年代後半、アクションゲームの主人公といえば男性が主流だった時代に彼女は登場し、圧倒的な存在感で業界に新たな潮流を生み出した。リブート後は外見的なアイコン性だけでなく、人物像そのものの深掘りが進み、現代的なジェンダー観へのアップデートも行われている点が評価されている。
このように、キャラクターの深み、メディアを横断する露出、そして時代に合わせて進化し続ける柔軟性。この三つが重なり合うことで、ララ・クロフトは「ただのゲームキャラクター」ではなく、世界中で愛される不朽のアイコンへと成長したのである。

