たまりば所属のVTuber・かぐや飛兎(かぐや・ぴと)が、顔出しを解禁し話題を呼んでいる。
かつて「新しい表現ジャンル」として注目を浴びたVTuberだが、いまや無数のVTuberが存在し、「バーチャルである」ことだけでは目新しさを失ってきている。このような飽和状態のなか、注目されているのが顔出しという選択肢だ。VTuberが本来持っていた利点の一つをあえて手放すこの動きは、なぜ生まれたのか。
本記事では、VTuberたちが「顔出し」という戦略を取りはじめた背景と、その意味について考察する
VTuberの強みだった「顔出し不要」のデメリット
VTuberの大きな魅力のひとつは、「顔を出さなくても活動できる」という匿名性にあった。リアルの容姿や身バレのリスクを避けながら、自分を自由に表現できる点は、活動者にとって大きなメリットだった。
だがその一方で、参入障壁が低くなったことで似たようなキャラクターや企画が乱立し、今や供給過多の状態である。
「話題にならなきゃ埋もれる」時代における“顔出し”という選択
こうした状況のなかで、特に中堅や新進気鋭のVTuberたちが取りはじめているのが、「顔出し」という選択だ。活動の幅を広げるため、あるいは話題性や差別化を狙ってリアルでの姿を公開するケースが増えている。
かつては「顔出しをしたらVTuberじゃない」といった価値観も存在したが、今ではその境界も曖昧になりつつある。VTuberに求められるのは“キャラ”の魅力だけではなく、“魂”としての個性や考え方を伝える力だ。
たとえば、実写の手や体の一部を見せる「部位チューバー」と呼ばれるスタイルで活動しているオメガシスターズや天羽しろっぷなども注目を集めている。
顔出しに限らず、リアル要素を取り入れることで、視聴者との距離を縮め、より強いファンコミュニティを築く流れが生まれている。
“魂を活かす”ブランディングと、ハイブリッド路線という選択肢
VTuberという存在において、もはや「顔を隠す=当たり前」ではなくなってきている。キャラクターの見た目や世界観だけではなく、“魂の個性”や人柄そのものが評価される時代だ。
こうした中で成功を収めている例の一つが、ksonの存在だ。VTuberとしての活動と、リアルでの顔出しを融合させたハイブリッドなスタイルで人気を集めている。
彼女は“魂の個性”を前面に押し出し、その裏側にある人間性や価値観を積極的に見せている。結果として、キャラクターではなく本人そのものを応援したいというファンが増え、活動の軸を広げることに成功した。
もちろん、「顔出し」こそが正解というわけではない。大事なのは、どうやって“魂の個性”を伝えるかだ。トーク力、ゲーム実況、モノマネ、料理、どんな分野であれ、一際光る武器を持っていなければ埋もれてしまう。これはVTuberに限らず、タレントやクリエイター全般に通じる競争原理といえるだろう。
VTuberの多様化進むなか、求められる戦略
可愛いビジュアルや独自の世界観といったキャラ性は依然として大切である。しかしそれだけでは、生き残るには不十分な時代に入っている。ファンが本当に求めているのは、その裏にある人柄やストーリー、つまり人間性だ。
「VTuberだからこうあるべき」という枠に縛られず、自分自身をどう魅せるか、そこに、今後のVTuberが選ばれる理由がある。
顔出しはそのための選択肢のひとつであり、「魂の魅力」をどう伝えるか。その戦略こそが、今のVTuberに求められるブランディングの核心といえるだろう。
まとめ
飽和状態にあるVTuber業界では、差別化や話題づくりがますます重要になっている。視聴者も、ただのキャラクターではなく、“魂の魅力”に共感できる存在にこそ惹かれる時代だ。
かぐや飛兎が顔出しという選択で話題を集めたのも、まさにその流れのひとつだろう。
「バーチャルだから顔を出さない」のではなく、「伝えたいことがあるから姿を見せる」。
そんな発想の転換が、今のVTuberに求められているのかもしれない。

