『不死身の血族』レビュー|賛否両論のハードなルパンは観るべきか

『不死身の血族』レビュー|賛否両論のハードなルパンは観るべきか アニメ

国民的アニメ『ルパン三世』の歴史に、強烈なインパクトを放つ一作が加わった。約30年ぶりとなる完全新作2D劇場版『LUPIN THE IIIRD THE MOVIE 不死身の血族』である。

本作は従来のコミカルな冒険活劇とは一線を画す、シリアスでハードボイルドな作風が特徴だ。そのためファンの間では「これぞ求めていたルパン」という期待と、「いつものルパンと違う」という戸惑いが交錯し、大きな話題となっている。

本記事では、賛否両論を呼ぶ本作の魅力と見どころを解説し、あなたが観るべき一作かどうかの判断材料を提供する。

賛否両論!新作映画『不死身の血族』はどんな作品か

本作は、小池健監督が手掛ける『LUPIN THE IIIRD』シリーズの集大成だ。

このシリーズは原作の危険な雰囲気を色濃く反映しており、『次元大介の墓標』『血煙の石川五ェ門』『峰不二子の嘘』といった過去作でハードな世界観を築いてきた。

その流れを汲む本作は、物語のトーンが極めてシリアス。私たちが慣れ親しんだコミカルな「赤ジャケットのルパン」とは違う、プロの「盗人」としてのダークな姿が描かれる。この徹底した作風こそが、賛否両論の最大の要因だ。

作品の概要とあらすじ

あらすじ:ルパンが挑む「不死身」の謎

舞台はバミューダ海域の謎の島。財宝を狙うルパン一行は撃墜され、島に不時着する。そこは兵器の残骸が転がり、24時間で死に至る毒が充満する絶望の地だった。

島を支配するのは「不老不死」を掲げる狂気の男・ムオムと、銃弾も斬鉄剣すらも通じない「死なない敵」。絶体絶命の中、ルパンは己の知略と誇りを賭け、24時間以内にすべてを盗み出し脱出するという究極のミッションに挑む。

予告編から感じるただならぬ雰囲気

予告編では『ルパンVS複製人間』など過去作の映像が盛り込まれ、シリーズの歴史を背負う作品であることが象徴的に演出されている。しかし続く映像は、苦悩するルパン一味の姿と退廃的な島の光景。

B’zによる主題歌「The IIIRD Eye」がダークな世界観を加速させ、本作が骨太な物語であることを印象付けている。

キャスト・スタッフ情報まとめ

役名声優
ルパン三世栗田 貫一
次元大介大塚 明夫
石川五ェ門浪川 大輔
峰不二子沢城 みゆき
銭形警部山寺 宏一
ムオム片岡 愛之助
サリファ森川 葵
ルウオ鈴木 もぐら(空気階段)
フウア水川 かたまり(空気階段)
原作モンキー・パンチ
監督小池 健
脚本高橋 悠也
音楽ジェイムス下地
主題歌B’z「The IIIRD Eye」
アニメーション制作テレコム・アニメーションフィルム

なぜ賛否が分かれる?「いつものルパン」との違いを比較

我々が知る「コミカルなヒーロー」としてのルパン

多くの人が知るルパンは、TVシリーズや『カリオストロの城』で見せるコミカルで憎めないヒーロー像だ。奇想天外なアイデアでピンチを切り抜ける痛快さが長年愛されてきた魅力の一つである。

本作が描く「原作回帰」のハードボイルドなルパン

対して本作が描くのは、原作初期の危険でシニカルなルパンだ。公式が「全てのルパン三世につながる原点」と語る通り、プロの盗人としての冷徹な顔を覗かせる。物語も、これまで以上に暴力的かつ重厚な仕上がりとなっている。

この「原作回帰」は、ファンに新鮮な驚きと戸惑いをもたらす。

【ネタバレなし】それでも本作を推薦したい3つの見どころ

賛否両論あるが、特に骨太な物語を求める層にこそ本作を推薦したい。理由は3つある。

見どころ1:大人の鑑賞に堪える重厚なストーリー

「人間の選別と排除」といった重いテーマは現代社会にも通じる問いを投げかけ、絶望的な状況で自身の「誇り」を賭けて戦うルパンの姿が観る者の心を強く揺さぶる。

見どころ2:ルパン一味のプロフェッショナルな駆け引き

ルパン一味は馴れ合いの仲間ではなく、プロ集団としての緊張感あふれる駆け引きを見せる。互いを信頼し、時に裏切るシビアな関係性は、まさしく大人向けのエンターテインメントだ。

見どころ3:息をのむバイオレンスとリアルなアクション

小池健監督の真骨頂である、スタイリッシュかつリアルなアクションは必見。痛みを伴うほどの生々しい暴力描写と、アニメならではのダイナミズムの融合は圧巻の一言である。

観る前に解消したい疑問点【FAQ】

過去作やTVシリーズは観ておくべき?

必須ではないが、『ルパンVS複製人間』や同シリーズの過去作を観ておくと、キャラクターの関係性やセリフの意味をより深く味わえ、面白さが倍増する。

伝説の敵「マモー」は登場する?

『ルパン三世 ルパンVS複製人間』で強烈な印象を残した伝説の敵・マモーが、まさかの再登場を果たす。物語が進むにつれ、島を支配するムオムの背後に潜む黒幕として、その存在が明らかになる展開は、シリーズファンにとって衝撃的かつ感慨深いものだ。

グロテスクな描写はある?

一部に暴力的なシーンやショッキングなビジュアルが含まれるが、物語に必要な表現の範囲内。ハードボイルドな作品が好きなら問題なく楽しめる。

まとめ:新しいルパンの歴史が動いた。あなたはこれを受け入れられるか

『LUPIN THE IIIRD THE MOVIE 不死身の血族』は、ルパン史における「問題作」であり、同時に「傑作」となりうる一作だ。

コミカルなルパンを愛するファンには戸惑いがあるかもしれないが、原作の持つ危険な香りを求めるファンにとっては最高の贈り物である。

賛否両論が巻き起こっている今だからこそ、自分の目で確かめる価値がある。これはルパン三世が新たな時代へ踏み出した挑戦状だ。

劇場で、この新しいルパンの歴史が動く瞬間を目撃してほしい。あなたは、このハードなルパンを受け入れられるか。

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