『閃光のハサウェイ キルケーの魔女』公開前に見るべき作品3選──宇宙世紀の流れを完全ガイド!

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機動戦士ガンダムシリーズの最新作『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ キルケーの魔女』が、今年の冬、劇場にて公開される。本作は、2021年6月に劇場公開されたアニメ『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』の正統な続編であり、同時に『機動戦士ガンダム』から連なる「宇宙世紀」を描く最新の映像作品でもある。

宇宙世紀とは、1979年に放送された初代『機動戦士ガンダム』を起点に展開されてきたシリーズの中核をなす世界観であり、重厚な歴史設定と政治的背景、リアルな戦争描写によって多くのファンを魅了してきた。

一方で、近年においては、宇宙世紀とは異なる時間軸や設定を持つ、いわゆる「マルチバース」的な作品群の存在感も大きくなっている。たとえば『ガンダムSEED』や、近年話題となった『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)』などがその代表例である。これらの作品は、宇宙世紀の設定とは独立したストーリーを展開しており、ガンダムシリーズに初めて触れる視聴者にとって、比較的入りやすい導入口となっている。

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その結果として、マルチバース系の作品からガンダムに触れ始めた視聴者の中には、宇宙世紀作品に対して「難しそう」「敷居が高い」と感じている者も少なくないであろう。設定や時系列の複雑さが、その魅力であると同時に、新規層にとっての障壁ともなっているのが現状である。

当記事では、そのような視聴者に向けて、『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ キルケーの魔女』を鑑賞するまでに、閃光のハサウェイに至るまでの、宇宙世紀関連作品3作品のあらすじを取り上げていく。

※当記事には、ネタバレが含まれています。

そもそも”宇宙世紀”とは?世界設定をおさらい

近未来、人類は人口過密による食料問題や環境破壊といった地球規模の課題を解決するため、宇宙空間に多数のスペースコロニーを建設した。そして、人類が本格的に宇宙への移民を開始した年を起点として、新たに採用された紀年法が「宇宙世紀(Universal Century)」である。

当時、宇宙に移住した人々――すなわちスペースノイドの多くは、いわゆる労働者階級であり。「地球環境の保全」という名目のもと、実質的には地球から追い出される形で宇宙へと送り出されたものたちがほとんどであった。一方、地球の支配層は、引き続き地上に留まり、スペースノイドに重税を課すことで、快適で安定した生活環境を享受し続けていた。

このような明確な階層格差と不平等な支配構造が、スペースノイドたちの間にいかなる不満や怒りを蓄積させていったかは、想像に難くないであろう。

宇宙世紀0079年、地球から最も離れた位置にあるコロニーに建国された「ジオン公国」が、独立を求め、地球側に宣戦布告を行う。この戦争はのちに、人々の間で「一年戦争」と呼ばれることになる——。
機動戦士ガンダムの物語は、ここから幕を開ける。

機動戦士ガンダム

1979年から1980年にかけて放送された『機動戦士ガンダム』は、まさしく宇宙世紀作品の「祖」と呼ぶにふさわしい存在である。シャア・アズナブルやアムロ・レイといった主要キャラクターの出発点であり、彼らの関係性や人物像を理解するうえでも、この作品は欠かすことができない。

宇宙世紀を本格的に知りたいと考えるのであれば、まずはこの『機動戦士ガンダム』から視聴を始めるのが最良であろう。

あらすじ

スペースコロニー「サイド7」で平凡な日々を送っていた一人の少年――アムロ・レイが、地球連邦軍の新型モビルスーツ「ガンダム」に偶然乗り込んだことから、物語は幕を開ける。突如として戦火に巻き込まれた彼は、そのままガンダムのパイロットとして、地球連邦軍の宇宙艦「ホワイトベース」に乗艦し、戦争の最前線へと身を投じることとなる。

ホワイトベースは、いわば「寄せ集め」で編成された即席の軍隊である。サイド7での戦闘によって正規の乗組員の大半を失ったホワイトベースは、19歳の士官候補生であるブライト・ノアを艦長代行として据え、さらに避難民の中から戦闘や運用に必要な人員を確保することで、艦としての機能を何とか維持していた。本来であれば軍務に就くはずのなかった若者たちが、自らの命を守るため、それぞれの役割を担い、戦争と向き合いながら、大人になっていく姿は、本作の象徴的な構図のひとつとなっている。

また、『機動戦士ガンダム』を語るうえで欠かすことのできない人物がもう一人いる。それが、「赤い彗星」の異名で知られるジオン公国軍のエースパイロット、シャア・アズナブルである。

シャアの正体は、ジオン公国の建国者ジオン・ズム・ダイクンの実子、キャスバル・ズム・ダイクンである。自らの父を謀殺することで、ジオンの統治者となったデギン・ソド・ザビとその一族に深い恨みを抱い彼は、身分を偽り「シャア・アズナブル」としてジオン軍に潜入。ザビ家への復讐を果たすべく、内部からジオンを揺るがそうとする陰謀を巡らせていたのだ。

シャアとアムロ――この二人の運命は、思いもよらぬ形で交差することとなる。

やがてアムロは、シャアのもとで育成されていた少女、ララァ・スンと出会う。ララァとの邂逅を通じてアムロは、自身の中に眠る潜在能力を覚醒させ、シャアを追い詰めていく。しかしその戦いは、ララァがシャアを庇って命を落とすという、深い悲劇をもって終焉を迎えることとなった。

その後、ジオン公国と地球連邦の全面的な戦闘が激化する中で、アムロの駆るガンダムは、シャアが搭乗するジオングと死闘を繰り広げ、両機は相打ち同然に大破する。シャアは戦線に参加していた自身の妹セイラ・マスに別れを告げた後、ジオンの総指揮官にしてザビ家の一員であるキシリア・ザビをバズーカで暗殺し、去っていく。

一方のアムロは、重傷を負いながらもホワイトベースの仲間たちのもとへと舞い戻り、その戦いに一つの幕を引いたのである。

その戦いののち、ジオンと連邦は終戦協定を結んだ。

機動戦士Zガンダム

『機動戦士ガンダム』の「その後」を描いた本作は、前作に登場した登場人物たちが、次世代のキャラクターと交錯しながら織りなす、どこかビターで重厚な物語である。その人間関係と戦争の現実が交差するドラマは、多くの視聴者の心を惹きつけ、宇宙世紀という世界観にさらなる深みをもたらした。

あらすじ

ジオン公国軍に対して実質的な勝利を収めた地球連邦軍であったが、戦後もなお、ジオン残党による武装抵抗は各地で継続していた。これを受け、連邦軍内部において結成されたのが、ジオン掃討を目的とした過激な武力組織「ティターンズ」である。ティターンズはその任務の名のもとに、各地のスペースコロニーで非人道的な作戦を次々と実行し、その強権的な姿勢によって反発を招いていた。

こうした連邦の暴走に抗するかたちで誕生したのが、反地球連邦組織「エゥーゴ」である。かつての「赤い彗星」シャア・アズナブルは、現在は「クワトロ・バジーナ」と名を改め、このエゥーゴの一員として活動していた。

物語は、エゥーゴの部隊があるスペースコロニーへ潜入する場面から始まる。そのコロニーで暮らす少年・カミーユ・ビタンは、宇宙港で、ティターンズの軍人、ジェリド・メサと出会う。ジェリドに自らの名前を侮辱され、激昂したカミーユは、ジェリドに暴行を働き、逮捕される。

その後、ティターンズによるガンダムMk-IIの訓練中に発生した事故をきっかけに、カミーユは軍施設からの脱走に成功。混乱の中でガンダムMk-IIを強奪し、コロニーに潜入していたクワトロ・バジーナ(シャア・アズナブル)らエゥーゴのメンバーと合流する。こうしてカミーユは、自らが生まれ育ったコロニーを離れ、戦乱の渦中へと足を踏み入れていくことになる。

カミーユの戦いは、常に「強化人間」と共にあったといっても過言ではないだろう。地球連邦は、一年戦争においてアムロ・レイやララァ・スンといった、常人を超える能力を有する「ニュータイプ」の存在に注目し、これを軍事的に再現・利用することを目的として研究を進めていた。その結果、人体改造や薬物投与、精神操作などを通じて、人工的にニュータイプに近い能力を持つ兵士――すなわち「強化人間」を生み出す技術が確立するにことに成功した。連邦軍、特にティターンズは、戦争孤児や被収容者などを対象に強化処置を施し、ニュータイプの代替として量産・配備を進めていた。一方で、このような経緯で生み出された「強化人間」たちには、情緒が安定しない、といった特徴があった。

カミーユが心を通じ合わせた少女、フォウ・ムラサメもまた、そのひとりであった。フォウは、強化される過程で「過去の記憶」を全て失っており、これを取り戻すことに固執していた。フォウとカミーユは互いに心を通わせるも、フォウはカミーユをジェリドのレーザーから庇い、死亡する。

のちに出会ったロザミアにおいても同様である。彼女は強化の過程で崩壊した精神の均衡を保つため、偽りの家族の記憶を埋め込まれていた。暗示によって幾十もの偽りの記憶を植え付けられた彼女が、不安定な精神のなかでなおカミーユを庇い、命を散らすシーンは視聴者に強い衝撃を与えた。

カミーユの物語は、木星帰りの男・パプテマス・シロッコに乗っ取られたティターンズ、ザビ家の権威を掲げるハマーン・カーン、そしてクワトロ・ヴァジーナ改めシャア・アズナブルを率いるエゥーゴによる三つ巴の争いへと発展する。

シャア・アズナブルはハマーンとシロッコとの激戦を繰り広げつつ、ティターンズ艦隊を撃破する。しかしその後、ハマーンとの交戦中に戦艦の爆発に巻き込まれ、行方不明となる。カミーユは死闘の末にシロッコを撃破するが、シロッコの断末魔により、精神が崩壊してしまう。

幼馴染でありエゥーゴの戦闘員でもあるファ・ユィリィは、その事実をブライト・ノアに告げたところで、カミーユの物語は幕を閉じる。

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